森谷明子『望月のあと 覚書源氏物語『若菜』』(東京創元社)レビュー

望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)

望月のあと (覚書源氏物語『若菜』)



 あまり間をおかずして、続篇の登場。つとめて平明な語り口は維持されて、とっつきやすいけれども、作者の善意は歴史小説プロパーにどれだけ届くかしらん。『玉鬘』や『若菜』に秘められた痛烈な反攻の精神性を浮き彫りにして、虚栄の都のミクロコスモスを読者に覗かせる。