中山七里『贖罪の奏鳴曲』(講談社)レビュー

本日のエピグラフ

 「司法試験はなあ、人格関係ないねん。な、オモロイやろ。困ってる人間助けるはずの商売なのに、人間性は考慮されへんのや。(…)」(p.157)

贖罪の奏鳴曲

贖罪の奏鳴曲



ミステリアス
クロバット10
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インプレッション
トータル41


 最後の最後まで読者を翻弄するのには、巧緻な伏線とともに、職人作家的頼もしさがある。だけれども、小説として吸引力が増すのは、第三章以降で、全体的に生硬な印象がある。登場人物が交わす会話では、目の前の相手ではなく、本を開いている読者へ向けて喋っているような違和感が拭えなかった。もう少し重厚なアプローチは狙えると思う。