小林泰三『アリス殺し』(東京創元社)レビュー



 辻真先『アリスの国の殺人』がファース仕立ての大人の絵本だとすると、本作はブラック・ユーモア風味の胡蝶の夢。ワンダーランドの滑稽さが、こちらとあちらで交錯して、作者の奸計だけが、この物語内部の唯一の“現実”なのだった。