若竹七海『暗い越流』(光文社)レビュー

暗い越流

暗い越流



 作者の久々のお目見えは、昨年の推協賞を受賞した表題作を含む短編集。葉村晶登場のは五編中三編だが、短編集全体として、ただ暗いトーンであるということではなく、共通した主題性がある。それは、現在的な犯罪の位相を、過不足なくトレースしているといえるだろう。作者のシビアな視線が、ギミック構築と相まって、図らずも現実の澱を浚い出してしまったかのようだ。