柄刀一『密室の神話』(文藝春秋)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)実際は、身近なたった一人の死のほうが、世界の終わりに近いものをもたらしたりしないだろうか。率直に言って、見知らぬ数千人よりも、一人の死のほうが、その個人にとっての世界を変える。粉砕する。(…)」(p.276) 

密室の神話

密室の神話



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 三年のブランクをもろともせず、冒頭から作者の小説世界に引き込まれて、大満足。アンチ・ミステリーの作法を脱構築して、本格ミステリーの再構築をしたという戦略性と、そのイヤミのなさが、作者の底力を示している。ロマンとともに、シュールさを追求してくれれば、作者の新展開に期待が持てる。