永江朗『私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス )レビュー


私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏

私は本屋が好きでした──あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏

  • 作者:永江朗
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

 この国に敷かれる独特というか異様な書籍販売制度である再販委託制――返品支払い付き買い取り制度。見計らい配本という取次が有無を言わせず本屋に送品してくるもののなかに多数含まれるヘイト本。大書店ならともかく、街のフツーの本屋には、少ない発行部数でも棚に置きたい良書はなかなか送品されず、大部数でおそらくは在庫を多く抱えているようなジャンク本が無理矢理押し付けられる。本書ではあまり触れられていないけれども、ヘイト本の類は初速がいいので、調子に乗って重版かけて売れ残ったのが、地方の小書店に卸されるのだろう。制度の間隙をぬって憎悪の本が増殖する。書籍流通の現在から、出版倫理を立ち上げようとする試みの書。