麻見和史『ヴェサリウスの柩』(東京創元社)レビュー

ヴェサリウスの柩

ヴェサリウスの柩


 
ミステリアス8 
クロバット7 
サスペンス7 
アレゴリカル7 
インプレッション7 
トータル36  


 山田正紀の選評にあるように、大乱歩の猟奇復讐譚の説話論的構造をおさえた象牙の塔ミステリ。謎に対する解答は、まあ取りあえずこれしか考えられないというものだけれども、それが黒幕の怪物的キャラを際立たす装置となる。小説は上手く、だけれどもそれゆえの人物造型における軽いノリという点も、通俗長編スピリットを受けたものと考えれば、らしいっていえば、らしい。鮎川賞らしくない、といえばそうなんだけれども、どっちかっていえば、乱歩賞、じゃなくて横溝賞向きだったかも。