山田正紀『雨の恐竜』(理論社)レビュー

雨の恐竜 (ミステリーYA!)

雨の恐竜 (ミステリーYA!)


 
ミステリアス7 
クロバット7 
サスペンス7 
アレゴリカル8 
インプレッション7 
トータル36  


 小説が上手いからスンナリと読まされてしまうけれども、ガールズ・ライフを描くのに恐竜をもってくるなんて、やっぱシュールだ。作者のなかに存在する「十四歳の少女」が物語内のそれらと共鳴しあってリリシズムが生まれたという作者の自意識より、むしろ作者自身の投射があるのは、殺人事件の嫌疑をかけられる恐竜のほうなのではないの? 世俗悪のショーケースのような殺人事件の顛末は、少女たちの人生における階梯を否応なく進めさせるのだが、「恐竜」はナラティヴな地平から歩み去っていく。彼女たち自身の“物語”は、むしろこれから始まるのだ。