大森望 豊崎由美『2007年版 文学賞メッタ斬り! 受賞作はありません編』(PARCO)

文学賞メッタ斬り!〈2007年版〉受賞作はありません編

文学賞メッタ斬り!〈2007年版〉受賞作はありません編



 
 芥川・直木賞の発表がある前に、本書をもいちどおさらい。中原昌也ファイヤーの冒頭から文学賞受賞作総鑑定、選評王(川上弘美)の顕彰を経て、グッバイ・ツモ爺、そしてメッタ斬りご両人を待ち受ける脱力の“結末”へと…………にしても、各せんせー方のキャラクターの約め方が、いしいひさいちの領域に近づいてきているような。阿刀田高をミスターって。面白い。宇月原晴明の作品をめぐって、直木賞の選評が腐されて山周賞のが讃えられているけれども、でも、山周賞のは結構退屈だよ。なんでアレだけ長いのか。本書の目玉であるツモ爺選評棚ざらえは、ツモ氏が直木賞受賞したときに書かれた選評から浚って、爺のお気に入りワードを突付いているのは、餞別のイヤミとしては到底素人の真似できないものです。――そして、本書のクライマックス、第136回芥川・直木賞の予想へと。票読みの深読み裏読みを重ねて出した結論は、もののみごとな卓袱台返しをかっくらい――というか、これってオチじゃないすか、明らかに。ちゅうことは、つまりやっぱりかなりの確率で、選考会ではご両人、無意識に意識されているんじゃないですか。ちゅうことは、ご両人に二重丸付けられた北村さん、やっぱり…………いや、ま、大丈夫っすよね。*1

*1:7/19追記。芥川・直木賞選考会の選評、じゃなかった感想です。――いや、豊崎さんじゃなくても、佐藤亜紀ミノタウロス』が挙がんなかったのは、ほんとどうかしているよなあ。