北國浩二『夏の魔法』(東京創元社)レビュー

夏の魔法 (ミステリ・フロンティア)

夏の魔法 (ミステリ・フロンティア)


 
 たおやかな小説作りに一定の成果を収めている。が、ここはサプライズによる作劇的効果をもっと狙って欲しかった――というのは、<本格>批評的に、西澤保彦の某作と対極的な位置にある物語として言及したい評者の我儘か。“成長”するってことは、<ふるさと>が現前するってことです。凄まじく荒々しい<自然>が浸潤するってこと。であるからこそ、追憶というのは残酷な“差異”なのです。