浅暮三文『ポケットは犯罪のために』(講談社ノベルズ)レビュー

本日のエピグラフ

 仏壇で手を合わせて、面白かったですよって祈ってやれば、やつも危害を加える気にならないだろう。(P205より)


 
ミステリアス8 
クロバット9 
サスペンス7 
アレゴリカル8 
インプレッション9 
トータル41  


 芦辺拓の『探偵宣言』は、既発表の短編を再解釈することを通じて連作集として半ば強引に纏め上げた力作ならぬ力技だったけれども、それに比べればやや手堅いかな。いや、本書自体の行く末をも視野に入れているということでは、メタ的冒険を賞揚する前に、ちと切なさを感じるかも…………だから、個々の短編のセンスの良さを、単純に味わいたい。表題作の意表をつくトリック、「薔薇一輪」のプロットの転がし方、「五つのR」はホワイダニットの秀作。この路線も維持してね。