霞流一『スパイダーZ 』(講談社ノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)こんなバカなトリックじゃ、誰も説得できん」/(…)/「ああ、解っているさ。だから、何かマトモな方法を偽装しなきゃな」(pp.194-195)

スパイダーZ (講談社ノベルス)

スパイダーZ (講談社ノベルス)



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 さすが『首断ち六地蔵』の作者だけのことはある、ハイブリッド本格。アイロニカルなことを、無骨な手付きで進めるのが、テクスト自体に瘴気を孕んでいるように感ぜられて、雰囲気的にチョーGJです。主人公が発する独特の奇声が、彼への感情移入を妨げ、それによる読者の物語的疎外が、結果的に物語におけるサスペンスを醸成させるのだ。