祭りのあと――第21回参議院議員通常選挙、総括――私的メモ



 1、客観的に見て、小沢一郎が大人の風格を見せ付けた、というしかない。はっきりいうけれども、私は安倍晋三に、何の皮肉でもなく、心より同情する。この敗戦責任は、政治家・文化人・ジャーナリストなど問わず、すべての安倍の取り巻き連中が負うべきものだ。安倍に朝日新聞批判をたきつけて、結果、安倍は全面的に朝日を敵にまわした。ある種の“権威”に与れなかった者たちが、権力の頂点にいる人間を使って、カタルシスを得ようとした結果が、今回の選挙だ。権力の頂点にいる人間が、どのような理由であれ、報道機関に訴訟を起こすことがあれば、どのようなリアクションが返ってくるか、火を見るより明らかだ。安倍晋三は、彼らに殺されたようなものだ。
 2、民主党が、「食糧自給率」の向上を掲げて、選挙に挑み、都市部・地方ともに、まんべんなく支持を集めて大勝した意義は大きい。戦後の給食政策から端を発する、アメリカの対日食糧政策に、日本の商社も一枚も二枚もかんできた。同じ構図は、現在の対中貿易でも反復される。中国輸入食品の安全問題が、この選挙に影響を落としていないとは、絶対に言えないだろう。
 3、つまり、民主党は、都市型リベラル政党から、(リベラル・)ナショナリズム政党へと変貌した。これは、小沢一郎の功績だ。小泉純一郎が「ぶっ壊す」結果、地方で生じたアノミーの手当てを、小沢一郎は、一年かけて行った。おそらく、自民票だけでなく、地方農村部に少なからずある共産票も、民主党はある程度ぶんどったはずである。
 4、自民党は、“地盤”が大きく毀損された結果、もはや頼るべきは、「財界」方面しかない。財界が食糧自給率の向上に対して、どう反応するかが、今後の、隠れたキーポイントになると思う。
 5、さらに、フリーター・派遣労働者などの「柔軟型」労働力の拡大を積極的に財界は進めてきた。彼らの政治的イシューの受け皿は、民主党しかない。
 6、民主党の危機は、いうまでもなく、民主党左派、旧社民党グループと、旧民社党、松政塾グループの、安保問題に対する対立だ。――つまりは、財界方面から、「外交・安保」に関する見解の表明について、議員ひとりひとりに、猛烈なプレッシャーがかけられるのではないか。やはり、「外交・安保」そして「9条改憲」をイシューに政界再編が仕掛けられるとしたら、目的は、民主党の解体、労働者の受け皿政党の破壊である。
 7、公明党創価学会の間に、深刻な亀裂が入りつつあるみたい。ジャーナリストでも何でもない、一介の市井人である私の耳にも、ネットではないナマの井戸端会議のレベルで、こんな話題が、入ってくる。他方、自民党支持者は公明党選挙協力しなかったというし、自‐公の亀裂が、「政界再編」の誘い水になる可能性は大だろう。