内田樹  高橋源一郎『沈む日本を愛せますか?』(ロッキングオン)レビュー

沈む日本を愛せますか?

沈む日本を愛せますか?



 政権交代前夜から首相交代後の選挙惨敗を経て、民主党代表選前夜まで、『SIGHT』誌上で交わされた、「時事放談」的なるものとは一線を画す、密度の濃い政治談議。放言と批評性の阿吽のキャッチボールが、優れて知的だ。この2年間は、日本政治の重要なアクターとしては、小沢一郎鳩山由紀夫が固有名詞で出てくるほかは、アメリカ・官僚・マスコミそして日本国民の「四位一体」という集団的(無)意識で、小沢のパトスと、「四位一体」の欺瞞のロジックを、飄々と解体していく手際が実にスリリング。興味深かったのが、民主党代表選の“読み”で、高橋が「ギリギリで菅じゃない?」というのに対して、インタビュアーの渋谷陽一が「菅の圧勝」と応え、「小沢に投票する、根性の据わった民主党議員がどれだけいるかっていうと、俺はほとんどいないと思うな」と読んだのだが、結果は少なくとも国会議員票では、高橋の“読み”が当たった。………まあ、何というか、音楽文化にコミットしているひとたちは、「四位一体」に取り込まれやすいのかなあ、と。