日本推理作家協会編『推理小説年鑑 ザ・ベストミステリーズ2007』(講談社)レビュー

ザ・ベストミステリーズ2007 (推理小説年鑑)

ザ・ベストミステリーズ2007 (推理小説年鑑)



 
 いくぜ。「罪つくり」期待通りの、絶品。”名探偵”小説としてのタメっぷりが、心憎いことこの上なし/「ホームシックシアター」タイトルが上手い。ハイスミス系の佳作/「ラスト・セッション」この作者の違った一面を見せる秀作。こっちが本質?/「あなたに会いたくて」視力がない者の記憶喪失テーマという設定の妙。しかし、タイトルはなんとかならんか/「脂肪遊戯」やっぱ男子にゃ書けんよねえ/「標野みて 君が袖振る」文学少女方面には好評なの?/「未来へ踏み出す足」“地雷シリーズ”の掉尾を飾る作品、という認識がなければ、カタルシスは得られない憾みはあるかもしれない/「ラストマティーニ」小品として隙がない出来。しかし、北森鴻はますます不思議な文体になっていくなあ/「エクステ効果」集中屈指の怪作。男子にゃ書けんよねえ/「落下る」客寄せパンダ/「早朝ねはん」巨人の家from『暗闇坂の人喰いの木』/「オムライス」伏線の張り方がつなわたりって感じで、そこがスリリング/「スペインの靴」読んでいて、一番楽しかった/「心あたりのある者は」えるちゃんを対話相手に選んだことで、とぼけた味わいが出ている/「熊王ジャック」連作短編の一編だから、短編部門に挙がらなかった、としたら、ちと悲しい。*1

*1:年鑑収録作品についての選考方法が変更された件について、円堂都司昭さんが詳らかにしているけれども、もしかしたら、予選委員ひとりあたりの負担って、何気に増えているのかも。