北村薫『1950年のバックトス』(新潮社)レビュー

1950年のバックトス

1950年のバックトス



 
短編&掌編小説集。「秋」や「手を冷やす」は、掌編というより、ほとんど散文詩の域に達している。“日常”の閾を、幻想・推理・回想などの手法で意識させるけれども、それにしても表題作は長編っぽい題材なのに、短編小説の枠組みが何か必然めいた感じが漂っていて、これは私たちが<過去>に対するある種の姿勢というか態度というか、そういったものに、この<小説>のありかた自体が共鳴しているせいかもしれない。「真夜中のダッフルコート」は、宮部みゆきの特別出演モノ、この系統のおはなしがもっと溜まったら、これで一冊に纏めてほしい。