木田元『反哲学入門』(新潮社)レビュー 

反哲学入門

反哲学入門



 『反哲学史』の著者の説き語り「哲学」の歴史学。はっきりいって、これ一冊読めば、「哲学」と呼ばれているものの姿かたちが、手に取るようにわかる。ほんとに、ほんとだよ。個々の哲学者の思索の内容には特にあまり立ち入らない(とくに、ヘーゲルハイデガー)のがミソで、要するに、「自然」の意味合いの変化――プラトンから始まった「超自然」的思考様式が、デカルト、カントを経て、ニーチェによって切断されるまで、「死せる自然」から「生きた自然」へと、古代ギリシアの時代の「自然」を<近代>に復権させようとする企てを、ひとりの古典文献学者が作為するまでを、闊達平易な語り口で説く。で、このニーチェのことを、ハイデガーが「形而上学」(=「超自然」学)の完成者だと、剔抉するわけです。そして、ハイデガーは、反ヒューマニズムを標榜するようになる。「人間」よりも「存在」が、その「存在」を告げ知らせる「言葉」が、先に来る、と――。「反哲学」=ニーチェ以後の「哲学」批判、というパースペクティブを導入して、「非哲学的風土だと言われてきた日本で自分たちがおこなっている思考作業がなんでありうるかを納得できるようになりました」。