田中慎弥『切れた鎖』(新潮社)レビュー

切れた鎖

切れた鎖



 “生殖”というテーマに“罪と罰”の意識をからませたのは、興味深い方向性。人間の関係性に主題性を求めた表題作は、高村薫の小説世界に近似した感があるけれども、「不意の償い」は主人公の妄想にフォーカスした分、作者の小説世界が掘り下げられていると思う。