日本推理作家協会編『推理小説年鑑 ザ・ベストミステリーズ2008』(講談社)レビュー

ザ・ベストミステリーズ2008

ザ・ベストミステリーズ2008



いくぜ。「傍聞き」プロット運びのセンスの良さで、他の候補作より頭ひとつ抜けたのだろう/「堂場警部補とこぼれたミルク」メタ構成でも、ちょっとした哀歓のテイストを加えているのは、この作者の方向性ということなのだろう/「退出ゲーム」小説的に手応えはあるものの、コンセプトが空転した感が/「悪い手」こーゆーの今でも書くひとが、なぜ露骨な“新本格”批判をするんだろ/「選挙トトカルチョ」とにかく巨匠が今に至るもこーゆーの書いてくれるのが、とっても嬉しいじゃないですか。横山秀夫と比べて軽妙なのは、むしろこの作者の矜持にかかわることなのだろう/「薔薇の色」悪くない小品/「初鰹」あ、これ連作なの。早く読みたーい/「その日まで」タイトルはいただけない/「ねずみと探偵」身につまされる、ひとはいるんだろうな/「人事マン」これが受賞してもよかったように思う。これもまた、身につまされる話/「点と円」面白い。地理的プロファイリングもアリなら、時間的プロファイリングもありそう/「辛い飴」絶品。ていうか、こういう話は、もうだめですわ。鳥肌たったあと目頭熱くなろうて/「黒い履歴」なんでこれが候補作に挙がらなかった? 作者が“社会派”としての腕を上げてきているのがわかる/「はだしの親父」「ギリシャ羊の秘密」は割愛。