- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/09/04
- メディア: 単行本
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恩田流のアンチ・ミステリとして愉しんだ。作者ほど、ミステリアスなものに対して、センシティブな感性を有している書き手はいないだろう。作者のビブリオグラフィにわざわざあたらなくても、納得されると思うけれども、本作では、提出された“謎”が、おそらくは拡散する方向の力学が、プロット構成やナラティブの次元で働いている。はっきりいってしまえば、ベタなミステリ的なカタルシスは、得られない。「町」の秘密は、物語の焦点になるべき存在であったけれども、サプライズを残しながらもなぜか後景に退いた印象がある。この物語は、“世界”からの視線から、我々が“謎”と呼びとどめているものを、フラットに眺めた感じがする作品である。読後には、一編の“小説”に確かに接したという充実感がそこに残る。