竹内真『文化祭オクロック』(東京創元社)レビュー

文化祭オクロック

文化祭オクロック



 年に一度出現する祝祭空間の賑やかさを巧みにトレースしながら、高校生たちの群像を描きだす。物語の焦点となる謎のDJが、ある種の不吉さを醸し出しているのは、道化なのかそうでないのかということもさることながら、端的にこの祝祭空間の破れ目であるからだ。そしてそれは日常空間の別の貌を伺わせるものであるだろう。作者のいきいきとした筆致は、現在の状況を視野にいれながら、物語を軽快に仕上げて、読後感がいい。