柴田よしき『いつか響く足音』(新潮社)レビュー

いつか響く足音

いつか響く足音



 荒廃するニュータウン団地というアクチュアルな舞台が用意されれば、熟練の作者ならば、かような物語を紡ぎだす、という見本のような作品。登場人物たちの悲哀と蹉跌を描き出す筆致が濃やかだからこそ、コミュニティの復権というテーマが切実な重きをもってくる。