奥田英朗『沈黙の町で』(朝日新聞出版)レビュー

沈黙の町で

沈黙の町で



 「いじめ」事件をめぐる群像劇だが、事件関係者の様々な視点から描くのに並行して、当事者の中学生たちをクローズアップして事件が起きてしまうまでの過程を追い、小説全体として構築性の高いものとなった。事件という波風が凪ぐときに、一体どれだけの「沈黙」が澱んでいるか、作者の筆致は濃やかに進んでいるだけ、シビアなアプローチを採っているように思える。