叶紙器『伽羅の橋 』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 それでも生きて笑っている。自分一人で生きてきたわけではないと、よく知っているから。(P463より)

伽羅の橋

伽羅の橋



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 第2回福ミス受賞作も力作。小説の叙述がやや不安定だけれども、主人公の勤める介護老人保健施設内のエピソードや、事件のあった戦時下への言及で、作者の作品執筆のモチベーションを感じ取ることができて、後半からは物語の吸引力がいや増している。中心人物の老女の肖像が前半でももっと前面にでていれば、クライマックスもより感動的になったと思うが、カタルシスは確かにある。