本日のエピグラフ
「うん……。農地解放のあとも、あの一族に楯突く者はおらんかったよ。米の販売ルートも牛耳られとったけんな。農地解放とは名ばかりで、以前と何ら変わることはなかった」(p.238)
- 作者: 吉田恭教
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2011/10/18
- メディア: 単行本
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ミステリアス | 9 |
アクロバット | 9 |
サスペンス | 9 |
アレゴリカル | 9 |
インプレッション | 8 |
トータル | 44 |
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今年の福ミス受賞四作はどれも力作。『鬼畜の家』以外はあまり書評で取り上げられないので、読みのがすことなかれ。本作は伝奇ミステリに医学トリックを組み合わせた意欲作で、トリックを成立させるために打たれた執拗な布石が、黒幕の常軌を逸した情念とつりあっているのをみれば、作者が物語内部のエコノミーを十分計算したのを見て取れる。乱歩賞受賞の某作がファンタジーに見えるくらい、おどろおどろしいが、随所にユーモアも仕込まれて、緩急の付け方がプロレベル。