蒼井上鷹『バツリスト』(祥伝社)レビュー

本日のエピグラフ

 「昔から、辛いものは頭によくないって言うじゃないか。(…)臭いと一緒に記憶まで消えたらたまらない」/「大丈夫よ」(…)「消えるのは悪い記憶だけだから」(p.325)

バツリスト

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 ブラック・コメディ調の展開はじゅうぶん可笑しく、後半になってくると重層的にプロットが錯綜してきて、読み手を翻弄する。オフビートな本格ミステリだけれども、タイトルの毒々しさとは裏腹な、物語に埋め込まれたユーモアが、小説を持ち重りのあるものにしていると思う。作者の作品のなかでは、一番気に入った。