田島正樹『正義の哲学』(河出書房新社)レビュー

正義の哲学 (道徳の系譜)

正義の哲学 (道徳の系譜)



 「革命的左翼」なんてコトバが出てくるから、おおっと身構えたけれども、内容はあからさまなハッタリとコケオドシとは、一線を画す。マルクスの遠近法である階級闘争の実践では、政治へ、「法」へと、運動の成果を実現することはできない。1848年の六月危機において、トクヴィルは「法」の権威が動揺するからこそ、「法」への希求性が高まり、プロレタリアートの反乱はその過激性から、プチブルジョワたちを反乱弾圧の実力行動へと駆り立てたことを冷徹に観察した。また、いうまでもなく、アメリカの左翼運動は、合衆国憲法を根拠に展開し、数々の成果を上げている。従来の左翼性が、「法」をネグることでその立場を担保してきたとしたら、これからの「革命的左翼」は「法」を創造しなくてはいけない。この「法」の創造性は、「問題」を解決するということにおける「創造」性と、本質を同じくする。このあたりの議論は、実にスリリングだ。『ヨブ記』のテクストを、従来とは逆の見方で解読して、この「創造」することの哲学的意味づけを鮮明にして、最後にニーチェの物語的パフォーマンスの意味性を確認して締めくくられるが、果たして、わが国に現存しているサヨクは、「革命的左翼」に移行することができるかどうか。現在のウヨクは、「革命的左翼」のプロジェクトを丸呑みできそうな。