西澤保彦『彼女はもういない』(幻冬舎)レビュー

本日のエピグラフ

 ……こいつの身元についてはいずれ警察が調べてくれることになるはずだから、と。(p.121)

彼女はもういない

彼女はもういない



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 『収穫祭』でサイコ系本格を極めた作者が、さらに目指すグロテスクな境地。犯罪者の行使するロジックは、逆説というより、妄想の閾に浸っているが、ファロセントリックの挫折という主題性が、各キャラクターに投影されて、ラストの圧倒的空虚感に向けての戦慄を奏でる。