谺健二『肺魚楼の夜』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)阪神大震災で人生が変わって、それから九年間、被災者のために夢中で走ってきたけど、震災当時は自覚のなかった心の痛みが、ここへ来てボディブローのように効いてきた、とでもいうのですかね。(…)」(P61より)

肺魚楼の夜

肺魚楼の夜


 
ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル41


 探偵役をひとりにしぼった分、物語をかなり大胆に進めることが叶ったのかも。天災から歳月を経るに従って、心理的な罹災がクローズアップされてくる。サイコ・スリラー的アプローチは半必然だけれども、それに奇想を絡ませる手つきをどう見るかで、本作の印象は変わってこよう。ツイストの利かせ方は悪くない。