中山七里『嗤う淑女』(実業之日本社)レビュー

嗤う淑女

嗤う淑女



 会心作を発表し続ける作者も、現代の悪女ものに挑戦した。読者としては当然ギミック重視で攻める、とあらかじめから思っていても、作者の構築した迷宮に搦めとられるだろう。作者の社会悪に対するアプローチは、強かに通俗的だが、それは悪の遍歴が記号的な交錯にしか還元され得ないリアリティを暗示しているのかもしれない。