真梨幸子『5人のジュンコ』(徳間書店)レビュー

5人のジュンコ

5人のジュンコ



 現代の悪女ものは、ミステリアスな存在性を印象付けるというより、アモルファスな悪意が醸し出す強烈さで勝負しているようだ。世相がその方向性に、リアリティと好奇心を差し向けているのだろう。サイコ・スリラーの現在一番の書き手が、このテーマに挑んだが、連作短編形式で現代社会が孕む瘴気を浮き彫りにして、サスペンスを持続させる。この作者らしい毒と技巧性が上手く噛み合ったと思う。