川瀬 七緒『フォークロアの鍵』(講談社)レビュー

フォークロアの鍵

フォークロアの鍵



 作者の伝奇ミステリ的展開を期待しているわけだが、新作はなんと介護民俗学を正面に見据えたものだった。認知症グループホームの実情を描きながら、謎の焦点がそこからの外部へと必然的に移るため、物語の風呂敷の拡げ方に戸惑う面もあるが、全体的に大団円へ向けて、小説は膂力を保ったと思う。作者の心意気やよし。