鳥飼 否宇『紅城奇譚』(講談社）レビュー

紅城奇譚

　作者がこの時代を舞台にするとはいかがなものかと思ったけれども、山田風太郎的伝奇テイストを飛び越えて、小栗虫太郎的異界エキゾチズムを味わってるような感じ。不可能状況の出来と、登場人物のパーソナリティーが絡み合っているだけに、封建主義的な人物造型から、必然的に逸脱するわけですね。作者の作品の中では最も、探偵小説的悪夢が演出されている意欲作。