横関大『仮面の君に告ぐ 』(講談社)レビュー

仮面の君に告ぐ

仮面の君に告ぐ



 SF的設定が大して引っかかりもなく読み進められるのは、小説がうまいからかもしれないけれど、それより作者がギミック以上の効果を設定に凝らしていないからだろう。この設定を転がして読者を翻弄するというより、状況から生じるサスペンスを丹念に描いて、そのこと自体が、終幕の落差を演出する結構で、唐突に幕切れた感のあるぶん、カタルシスは薄いかな。