本格ミステリ作家クラブ・編『本格ミステリ06』(講談社ノベルズ)レビュー



 いくぜ。「霧ケ峰涼の逆襲」追いつけ追い越せ涼○ハルヒ/「コインロッカーから始まる物語」くろけん氏の作風のプチ転換にエール/「杉玉のゆらゆら」霞サン後味がだんだん泡坂妻夫に似てきた/「太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)」究極の視覚トリック/「この世でいちばん珍しい水死人」水晶のピラミッドの返歌/「流れ星の作り方」技あり/「黄鶏帖の名跡」幼少の砌カラーヒヨコを死なせてしまったトラウマが……/「J・サーバーを読んでいた男」動かぬ証拠/「砕けちる褐色」題名賞。獅子身中の……/「陰樹の森で」作者得意のインナーサークルもの/「刀盗人」集中一番オーソドックス/「最後のメッセージ」動かぬ証拠/「シェイク・ハーフ」ヒラではだめなんですよね。むかしのイでも。ハーフにかからないから/「『攻殻機動隊』とエラリィ・クイーン」小森健太朗の<あやつり>講義。「それに応じて、その世界で生じる<あやつり>は、(中略)ネットワークが張り巡らされた中での、結節点からの多方向に広がる動きとして把握し直さなければいけない。」となると、これは必然的に、ネグリ=ハートの<帝国>論に、<あやつり>論が漸近することになる。果たして、「本格ミステリ」は<帝国>の夢を見るのか、マルチチュードは黄色い部屋に住めるのか、それともクイーン=法月のように“砂漠”へと発つべきなのか?