2014年下半期(2014年5月〜10月)は、連城三紀彦の遺作長編二本で、なんとか引き締まった感じ。本格ミステリが、ラノベ的なるものとケーサツ小説的スノビズムに引き裂かれている状況があり、さらに、コストパフォーマンスと訴求性を狙った文庫初刊物の増加が、その戦略性がウラ目に出て、一部のベストセラーを除いて文庫再刊物に埋もれてしまうといった現場の混乱がある。一部を除き各社が新書・ペーパーバック版からほとんど撤退しているのが痛いのだ。関係者各位には、再考してもらいたいのだが。
- 作者: 連城三紀彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/29
- メディア: 単行本
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第1位:連城三紀彦『女王』
この作品は、やはり作者の長編リストの中でも、特異性が際立っている。逆説の論理は、歴史的時間性から超越した位置からなされるものだが、作者はこの作品において、露骨に“歴史”を導入した。果たして、読者は、“逆説”と“歴史”の、“物語”における主導権争いを目の当りにすることになる。要するに、“歴史”なんてものが実在するのか、すべては稗史にも満たない個人的な秘史に堆積する“逆説”の見せる幻影ではないか――ここから、後期連城三紀彦が始まったのだ。
- 作者: 柄刀一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/10/29
- メディア: 単行本
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第1位:柄刀一『密室の神話』
復活。アンチ・ミステリーという「神話」を、また裏返したような作品だ。アモルファスな知的探求のスタンスが、今後の戦略性の構築にどう影響するのか、気になるところ。
- 作者: 麻耶雄嵩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/08/06
- メディア: 単行本
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第3位:麻耶雄嵩『さよなら神様』
警官に「さよなら」という方法はまだ見つかっていないけれども、神様には、さよならって言えちゃうのね。無神論者は、無心論者なのかしらん。結末のわかっているミステリーなんて、などということではないにしても。
- 作者: 天祢涼
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/09/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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第3位:天祢涼『都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ』
名探偵の道化ぶり、両義性を今現在、最も体現しているシリーズ。連作の各話も、何気にバリエーションに注意を払っていて、作者の職人ぶりが頼もしい。
イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I (光文社文庫)
- 作者: 鏑木蓮
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/05/13
- メディア: 文庫
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第5位:鏑木蓮『イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり: 賢治の推理手帳I 』
この作品集が、今年一番本格ミステリ的に安定していたなあ、と思うんですよね。本格のツボを押さえて、フツーの突拍子もなく安心して目を丸くできる、そんな本格需要に応えてくれる。版元の営業は、しっかり売ってよね。