山田正紀『翼とざして アリスの国の不思議』(光文社カッパノベルス)レビュー


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス8 
アレゴリカル7 
インプレッション7 
トータル38  


 ジャプリゾに対するオマージュが、山田正紀連城三紀彦と、それぞれ違ったアプローチを見せているのが面白い。<主体>を分裂・錯綜させる算段が、“想像界”で企まれるか“象徴界”で企まれるかの差異、とでも言ったらよいのか。で、山田の場合、そこに“政治”や“歴史”が召喚され、連城の場合“対幻想”が絡まりあってくる。――ドッペルゲンガー国粋主義思想を絡ませたという点では、前作『マヂック・オペラ』を引き継いでいるのだけれども、殺人者の行動を顧みると、島田荘司の『幽体離脱殺人事件』のそれと通底するパトスを感じ入ってしまうのだが。