芦辺拓『からくり灯籠 五瓶劇場』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ

 いや、それとも……「実は虚となり、虚は実となる」あのときの正三との対話のように、彼ら物語作者の筆先から事実が生み出されてしまったのか。(「けいせい伝奇城」P70より)

からくり灯篭 五瓶劇場

からくり灯篭 五瓶劇場


 
ミステリアス8 
クロバット8 
サスペンス9 
アレゴリカル8 
インプレッション10 
トータル43  


 いやー、文体が物語のツボに、はまることといったら。「パックス・トクガワーナ」の“鎖国”体制(実質は管理貿易体制)下で、異人・異文化とのコンタクトの痕跡が、目も眩むイリュージョンのモメントとなる。「五瓶力謎緘」は、連城三紀彦の某名作の返歌としても読める。「花都写楽貌」は写楽論争そのものへのオマージュで、ニンマリ。泡坂妻夫写楽百面相』参照。――ともあれ、作者の代表作となるだろう。