有川浩『図書館戦争』(メディアワークス)レビュー

図書館戦争

図書館戦争


 
ミステリアス6 
クロバット7 
サスペンス8 
アレゴリカル8 
インプレッション8 
トータル37  


 誰が言ったか「自衛隊萌え」、本作は、「図書館の自由に関する宣言」の忠実な実践をシミュレート。月9というより大映テレビのノリ、でもやっぱりアニメの規格だよなぁ。自ら、県民レベルの「ぷちナショナリスト」を任じているように、作者がシンパシーを覚えているのは、国軍というより、“州兵”といったほうがいいだろう。無論、州兵も有事には国軍に組み入れられるわけだが、革命権の延長で、国家が自治州を不当に侵害した場合、州知事は“州兵”を以て国家に抵抗してもよい、という見解もある。革命権のリアリティが、抽象的な抵抗権(人民による統治権)ということもさることながら、土着のナショナリズムによっても担保されているというのは、麗しき“刀狩り”の伝統がある我が国では感得されにくい。武器を持ったら革命(あるいは抵抗)、ではなく戦争という方向にアタマが行ってしまうお子たちは、権力者にとってはまことに可愛げがある存在なのだが(徴兵制廃止に<左翼>が抵抗したフランスとはえらい違い、こりゃ「街頭政治」なんて夢のまた夢だね)、例えば高村薫にしても本作者にしても、レジスタンス小説を女性が書いて、それでしっくりしてしまうのは、日本が基本的には母権社会だからか。