斉藤美奈子『たまには時事ネタ』(中央公論新社)レビュー

たまには、時事ネタ

たまには、時事ネタ



 
「時論家」とは、元は福沢諭吉がそう宣った肩書きで、今は宮崎哲弥が自らをそう嘯いているみたいだけれども、このコトバが今一番しっくりくるのは、著者かもしれない。ていうか、多くのフェミ系論客(女に限らず)が“理論”に溺れて空回りしているのに対して、著者は彼らを逆に諫めたりする強かさを持つ、腰が据わっている人。ここに収められている「時論」は、はからずもコイズミ政治の展開を批判的にトレースする文脈を構成するけれども、自堕落なホシュ化が進んでいくなかで、“リベラル”的なるものが窒息させられていく生々しさがあると意地悪く見られなくもない。教基法リニューアルで再び“国権”が強化されようとしているのは事実だが、その前にこれが文教族の権益拡大に繋がっているとの指摘があってもよかった。あと、皇室お世継ぎ問題は、フェミ系はまだるっこしい物言いですねえ、さすがの著者でも。無論皇室タブーに絡め取られているというワケでなくて、女系容認にも強烈な保守イデオローグがついているからですね。皇室問題はすべからく黙殺する、積極的無関心という態度をとることが、フェミ政治的に正しい態度ではないでしょーか。――おたかサン去ってタカが舞い降りる、とは駄洒落だけれども、そのタカについばまれぬ屍肉にならんように、気をつけないと。