東浩紀・北田暁大『東京から考える』(NHKブックス)レビュー

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)



 
 サブタイトルは「ジャスコ化するポストモダン」ってところかしらん。「人間工学」的リベラリズムが貫徹されていくなかで、“リベラリズム”の「外部」にある、人間(として)の自然性の部分が、ナショナリズムという妖怪を召喚する。「大地と血」なら、「血」のほうが優越する、ということで、だから「少子化を憂うがゆえにナショナリズム」もありうるということになるのだけれども、これには移民排斥というワンクッションがあると思う。「人間工学」的なるものが、ライフスタイルの多様性を保障しつつ、空間的な均質性圧力をかけ続けるのだとしたら、著者たちが言及しているような中間集団の再編成が、「生物学的」なナショナリズムに対抗できるようなものになるかが焦点になるのではないか。終章で、著者たちの対立点は、そのままローティとロールズのスタンスの相違に類比されることになるが、ローティ的「共感」が、ロールジアンたちの、その問題意識をも「生の具体的な細部」と捉えることができるのならば、(アイロニカルな)プラグラマティズムがメタ・リベラリズム的な位置を占めることも可能だと思える。…………ともあれ、「東京」の都市としての肉感的な変容を感じ取ることが出来る好著。あと、例の世田谷事件本はガセネタであるとはっきり言ったほうがよいのでは。警察も否定しているのだから。