藤野恵美『ハルさん』(東京創元社)レビュー

ハルさん (ミステリ・フロンティア)

ハルさん (ミステリ・フロンティア)


 
ミステリアス7 
クロバット7 
サスペンス6 
アレゴリカル7 
インプレッション7 
トータル34  


 三人称叙述でキャラクターに敬称・親称の接尾辞を用いているのは、空回っていないと思う。ミステリとしては第四話がブラボーなんですが、この物語の枠組みである必然性はないんですが。しかしこれもまた優しい“父性”がテーマなんでしょうか。優しい、というより、憎めない、といったほうがよいか。愛娘の“像”を去らせていくことによって、娘の“親殺し”を父が追認する儀式的場面をラストにおいて、小説全体を引き締めた感がある。