愛川晶『三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)まるで同しものを、『悪し』とも『良し』とも呼ぶんだから、ややこしい話で……」(「鍋屋敷の怪」p.303)


ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル45


 落語ミステリというより、確固とした芸術ミステリである本シリーズ、いったんお開きということであるけれども、でも、いったん、ということになったのは、有難い。表題作で、作者オリジナルの新作落語を登場させて、シリーズを完成させた。語りと騙りが交錯するところに人情の機微、悲喜交々を実感させる、大人の、というだけでなく、時による風化に耐えうる、本格ミステリである。