石崎幸二『首鳴き鬼の島』(東京創元社)レビュー

本日のエピグラフ

 親子鑑定の場合、絶対違う、と判断するほうが簡単です。ひとつでも違えば親子ではないわけですから。(P158〜159より)

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)

首鳴き鬼の島 (ミステリ・フロンティア)


 
ミステリアス8 
クロバット10 
サスペンス7 
アレゴリカル7 
インプレッション10 
トータル42  


 いやこりゃ面白いおもしろい。古典的トリックの現代的再生というだけでなく、トリック解明における陰と陽の反転の鮮やかさ、という点においても、例えば三津田信三『首無の如き祟るもの』に十分に比肩しうる。ともあれ、「DNA」を探偵小説的ガジェットに変貌させたのは、作者の功績で、要するに、科学捜査の輝ける象徴から、イカガワシイ匂いのするものへと、<本格>というジャンル内で、意味合いが転換した、ということだ。後続の作家が、本作の達成を踏まえて、更なるアクロバットを演じてくれるのを期待したいところだ。…………もちろん、本作の“物語”が、トリックの鮮烈さに拮抗しうるだけの“見映え”があるかどうか、は別問題だけれども。