石持浅海『心臓と左手 座間味くんの推理』(光文社カッパノベルス)レビュー

本日のエピグラフ

 「沖縄には沖縄の、東京には東京の苦労があります。(中略)」/(中略)/「私たちは、東京で生きていくんですから」(「沖縄心中」P221より)

心臓と左手  座間味くんの推理 (カッパ・ノベルス)

心臓と左手 座間味くんの推理 (カッパ・ノベルス)


 
ミステリアス9 
クロバット10 
サスペンス7 
アレゴリカル9 
インプレッション10 
トータル45  


 島田荘司が『リベルタスの寓話』で「民族主義者」の内面を、猟奇犯罪に託してカリカチュアしたのに対して、石持浅海は本作で、“原理主義者”の内面の倒錯を、鮮やかな逆説的論理につなげて見せた。とりわけ、「罠の名前」以降、めくるめく論理的展開=転回を堪能できる。それにしても、警察官が民間人と待ち合わせて、舌鼓を打ちながら事件を紐解いていくという設定が、可笑しいといや可笑しい。