柄刀一『黄昏たゆたい美術館』(実業之日本社)レビュー

本日のエピグラフ

 「自然に対して手を加えるというのは、そういうことです。光の色が失われる。(…)」(「黄昏たゆたい美術館」P411より)

黄昏たゆたい美術館

黄昏たゆたい美術館


 
ミステリアス10
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション10
トータル46


 御倉瞬介シリーズは、作者にとって最良のものだろうと思う。トリックメーカーとしての作者のアモルファスな知的志向性が、絵画の来歴を物語に重ねることによって、キャナライズされているのが、小説に風格を与えている。加えて本集では、家庭の悲劇テーマや伝奇小説、史実探究と、多様なアプローチが試みられており、充実の一冊とするのに何ら不都合はない。