柄刀一『ペガサスと一角獣薬局』(光文社)レビュー

本日のエピグラフ

 「伝説のユニコーンは、人を選んだり、判定を下したりするだろう。(…)でも、このシャルウッドの森のユニコーンは、神様の創造物には違いないけど、たぶん、人と自然のかかわりの間で生まれた生き物なのさ。だから、人を探るような力は持っていないし、より身近なんだ」(「ペガサスと一角獣薬局」P238より)

ペガサスと一角獣薬局

ペガサスと一角獣薬局


 
ミステリアス10
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル10
インプレッション10
トータル48


 頭の先から尻尾まで、奇想の餡子がたっぷり詰まった、正真正銘の本格ミステリー。フォークロアを題材に、奔放な“奇想”の飛翔と、そのアクロバティックな着地ぶりが、一編の“小説”に昇華している見事さを堪能できる。作者の仕事のなかで、文句なしに最高の部類に入るもの。表題作の結末には、思わず目頭が熱くなる。