小島正樹『扼殺のロンド』(原書房)レビュー

本日のエピグラフ

 「名探偵を前にして緊張するのは解ります。けれどまあ落ち着いて」/(…)/「さあご依頼を!」(P228より)

扼殺のロンド (ミステリー・リーグ)

扼殺のロンド (ミステリー・リーグ)



ミステリアス10
クロバット10
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル43


 奇想系本格の王道を行っていて、素直に面白かった。屍体にまつわる作為は、あまりにも詭計めいていて、かえって花マル。だから、作者のぶつかっている最大の困難さは、名探偵という表象をめぐる通念の呪縛、換言すればキャラ設定のお約束から、いかに逃れるか、であると思う。刑事キャラが担保するリアリズムと、名探偵キャラの体現する(セルフ)パロディ的要素の同居が、小説空間を微妙に不安定にさせているが、まだ名探偵小説の新機軸を手探りしているところなのだろう。