獅子宮敏彦『アジアン・ミステリー』(南雲堂)レビュー

本日のエピグラフ

 「(…)本格マニアなら、勿論、シャーロック・ホームズは読んでいるんだろう?」/(…)/「全部は読んでいません。有名なものだけです」/(…)/「なにしろ、あの時代のイギリスは苦手でして――」(p.37) 



ミステリアス
クロバット
サスペンス
アレゴリカル
インプレッション
トータル42


 タイトルから、どうしてもエキゾチズムな欲望を読み手は作動させてしまうが、内容は山田正紀『ミステリ・オペラ』にも匹敵する、濃密な政治力学が支配する物語空間で、奇想が十二分に炸裂する。マニアックな感性が、スノビズムに帰結することなく、“出来事”としてのダイナミズムを顕現させる方向性を、奇想系本格のモチベーションは担保させるのだなあ、と。