小森健太朗『英文学の地下水脈―古典ミステリ研究 黒岩涙香翻案原典からクイーンまで 』(東京創元社)レビュー



 探偵小説史をめぐる捨象された流れ、即ち「一般にミステリはポオとともに始まるといわれるが、ルイス・キャロルに始まる、倒錯した論理文学としてのミステリ史」の探究。これは同時に、黒岩涙香が翻案した探偵小説の作家たち、彼らの系譜を作意するということでもある。――ということで、あとは、このありうべき探偵小説史をお勉強です。で、この本で、やっと著者の、というか作者の創作における意図がわかった、ような気が。少なくとも、『探偵小説の論理学』よりも、腑に落ちるわけで。で、この系譜を引き継ぐのが、様相論理学的探偵小説、モナドロギーの探偵小説ということ、でいいんですよね。しかし、「自我」の解体という文脈で、「密室講義の系譜」を閲すと、犯罪主体たる“犯人”という存在が、なにやら構築主義的に見えてくるのがフシギ。